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第12話

「触ってみて。とろとろになってきましたよ」  自分の指で解け具合を確かめられるほどになる頃には、内腿を撫でられながら自然と脚を開かされていた。自分で触れることすら初めてなのに、こんな風にしてひどいと思った。どうせならさっさと打ち込めばいいと腹が立った。  こね回されてとろりと熱く膨らむ場所はとくとくと脈打ち、満たされるのを待っている。違う器官になってしまったみたいに柔らかく、生々しい感触と先の見えない今の状況にくらくらする。 『さっさとしろ』そう言いかけた瞬間、真ん中にあてられた指がとぷんと沈められた。 「はぁっ…あっ…っ…」  ぎゅっと締まる内壁を押し分け指が進むのが苦しくて、思わず大きく息を吐き出す。埋められているのがあの細くて綺麗な指とは思えないほど、体の内側から無理に押し広げらる圧迫感は大きく、意識せずとも全ての神経がそこに集まる。  不意にずずっとさらに奥に指が進み、嬌声を上げた。随分と奥に触れられている気がしていたのに、まだ浅いところだったのかと絶望的な気持ちになった。 「やっ……きもち、わる…い…」 「すぐによくなります」  何が『いつでも止める』だ、男の軽い言い様にますます腹が立った。文句を言ってやろうとしたのに、指を増やされ息を飲む。 「志生さんが、いけないんですよ。煽るから」  どこかで聞いたことのあるような台詞を耳元で囁かれ、決まり文句だと思いつつ体の奥が泡立つ。煽ってなどいなくても、初々しい反応が媚態に見えるのは知っている。自分を保つ余裕がないのが、恥ずかしいというより腹立たしい。  そもそも抵抗する必要なんてなく、男に全部任せて快感に身を浸せばいいのに、散々犯した相手を前に乱れるのを自尊心らしきものが許さなかった。それでも心も体も流されようとするから、頭の中はぐちゃぐちゃにかき乱される。 「知ってるでしょ?内側のとこ擦るとどんなだか。志生さんの声、聞きたいな」  性感帯があるのは知っている。期待のような、不安のような緊張を覚えた瞬間、突然の刺激に体がびくんと跳ねた。内側の襞を全部伸ばすように強く指で掻き擦られ、堪らず声を漏らした。 「やっ………アっっ…ん!あっ…あ、あっ……」  指はやたら容赦なく動き、まるで嬉しそうに蠢いているように感じる。感情は高ぶるのに目の前は白く霞み遠ざかる。あられもなく喘ぐような声が止められない。  嫌で仕方ないのにその背に手を伸ばし抱きつき、声を出さないために骨ばった肩に歯を立てた。顎に力を込めないよう体の芯を締めつけ、意識を散らすのに必死だった。体の底から襲うほどの勢いで湧き上がり、内側を占めていくのは激しい快感に他ならない。  次の瞬間ずるりと一気に引き抜かれる感覚に体が引き攣れ、呻いた。中にあったものを完全に失い、すぐに物欲しげに入り口をひくつかせているのがわかる。 「順応早いですね。どんなに見えてるか知ってます?もっと欲しいって、可愛くねだってますよ」 「面白がる…なっ…そういうのは…いらないっ…っ…はぁっ…」  肩を抱いて顔も見ないまま悪態をついたら、またすぐに中が満たされて大きな息を吐いた。あれほど受け入れ難かった二本の指を造作なく挿れられて、それじゃないと叫びそうになる。  後ろは熱の塊のようなものを抱えてじんじんと痺れている。意志とは関係なく体の芯が震え、指ではないもっと硬くて熱いものを求めているのがわかった。それでも隙間から足される潤滑剤にひどい違和感を感じ、かき回す指と全てを内襞は吐き出そうとする。 「すぐにいっぱいにしてあげますから、もうちょっと我慢して」 「嘘つき…いっ…痛い…」 「すっごいもうとろとろに解けてて、痛そうじゃないんだけどな。初めてだから、多少はしょうがないですね」  あっさりとした言い様にまたひどく苛立ちシーツを思い切り蹴ったら、刺激が余計体に響いた。優しくしたり、受け流したり、対応を変えられるともてあそばれているようで嫌だった。 「もう、さっさと…挿れ…ろ…」  唇の端を綺麗に上げたのが見えた瞬間、一気に中から引き抜かれる。 「はっ……んっ…」  その指を引き留めるような頼りなく甘い声を漏らし、懇願するように腰を揺らしてしまう。焦らすように硬く昂ぶるものが滑る粘膜に充てられ、擦り付けられるが挿入はされない。焦らされるほどに、自分が何を欲しがっているのかさっぱりわからなくなる。 「本当にいいんですか?」  やたら落ち着いた男の声を聞いて、気を遣っているのだろうが今更お前がそれを言うのかと、一層イライラして早急に中に欲しくなった。いつ途切れるとも知れない流れを止めないで欲しかった。

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