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星流SIDE 10

「ぁっ、先輩」 あれから先輩は僕を抱くけれど、殆ど無言を貫いている。 勉強会には参加してない。 いたたまれない空気が重い。 悪いのは僕と斑鳩。 でも一番悪いのは、斑鳩の暴走という甘えの延長を抑えられなかった僕。 ダメなもんはダメ。 きちんと言って止めなければならなかった。 だが、怒るのが可哀想で、斑鳩が可愛すぎて、斑鳩にされる愛撫が気持ち良過ぎて、止めなかった。 飼い主失格だ。 唯可愛がるだけなら誰でも出来る。 でも好きだって、大切だって思っているのなら、可愛がるだけじゃダメだ。 きちんとして良い事と悪い事は教えなきゃいけないし、時には心を鬼にして怒らなければいけない。 先輩に謝ろう。 そう思っているのに、怒っている先輩が怖すぎてビクビクしてしまい、何も言えずに数日が過ぎてしまった。 休み時間、廊下の窓から外を眺めていたら (あっ、先輩だ) 先輩の姿が目に入った。 眉目秀麗でスタイルの良い先輩は大学に入ってもその人気は衰えない。 寧ろ前にも増してモテてる気がする。 綺麗な黒髪ロングな女性に親しげに話し掛けられ、微笑んでる。 ズキリ、小さく胸に何かが刺さる。 肩を触られ (嫌だ) 胸がざわついた。 怒っているせいで、僕に先輩は笑いかけない。 視線も声も冷たくて、触れてはくれるが、ソレも事務的だ。 合わせて貰えない視線。 最中に呼ばれない名前。 (嫌だ、嫌だ、嫌) ツゥー、涙が頬を伝った。 一度溢れ出したソレは止まる事を知らない。 顔を隠しながらしゃがみこんだ。 先輩、先輩、先輩。 寂しい。 寂しいです先輩。 泣いていたらふわり持ち上げられた身体。 (え?) 驚いて目をパチクリさせると 「なんで泣いてんの」 先輩が僕を姫抱きしていた。 そのまま先輩は屋上に足を向けた。 「さっき、先輩が綺麗な人と話してるの見ました」 「嗚呼、彼女ね。友人の一人なんだけれど、時折スキンシップが激しくて困ってるんだ」 「好きなんですね、先輩の事が」 「断ったんだけどね、友人だから余り無下にする事も出来なくてね」 確かに。 全然親しくない人なら適当にあしらえるが、友人ならどうして良いか分からなくなる。 「ねぇもし俺が断れないからって彼女とキスしたらどうする?」 え? 「抱き締めて触れて、星流にするのと同じ様な事をしたら?」 ………………………………っ。 「ヤダ。嫌です。先輩は僕のです。だから僕以外に触れて欲しくない」 苦しくて流れる涙。 それを指先で拭うと 「漸く理解したみたいだね、星流」 ふわり先輩は微笑んだ。 「俺が星流以外に優しくしたり触れたら嫌でしょ?俺も一緒だよ。俺も星流には俺以外触れて欲しくない。だから怒ったんだよ。自分でも心が狭いって分かってる。でも許せないんだ。星流、俺だけを見てくれないか?俺だけを愛して?」 好きだ、愛してる。 愛の言葉を告げながら、先輩は僕を抱き締めた。 その後無事仲直りをした僕達は笑い合い、唇を重ねた。 初めての喧嘩。 ソレは僕が先輩の気持ちをきちんと理解してなかったのが原因だった。 翠葵の事は大好きだ。 でも翠葵と恋人になるつもりはない。 斑鳩の事は滅茶苦茶に可愛いし大切だが、翠葵同様恋人になる気はサラサラない。 なら二人に気を持たす事はしていけない。 触れたくても我慢しなければならない。 だって先輩が自分と同じ様な行動をしたら嫌だ。 自分がされて嫌な事を僕は先輩にしていた。 「ごめんなさい」 謝ると 「もう俺以外には触らせないからね?」 先輩は項を触った。 その日、先輩は首輪を外した。 「此処に付けるからね?俺の番だって証」 ねっとり舌を這わせながら言われ 「はい。僕を先輩の番にして下さい」 覚悟を決めた。 「ん、ゃ、やぁあぁああ、ぁあ」 初めて全て収められた先輩の物。 大きくて太い物が、胎内全てを余す事なく刺激する。 「痛い?」 心配そうに聞かれ 「大丈夫、です。続けて……下さい」 答えながら羞恥で先輩の胸に顔を埋めた。 「ふゃ、ひゃぁぅ、んぁ、ぁ」 声が止まらない。 「星流、星流。好きだ、愛してる」 甘く囁かれ 「ん、先輩。僕も、僕も好き」 熱くなる身体。 心が満たされる。 嗚呼、なんだ。 そうなのか。 僕、先輩が好きなんだ。 自然に口から出た言葉に、いつの間にか唯流されていただけではなく、好きになっていた事を気付かされた。 「初めて聞いた」 「初めて言いました」 ふふふ、互いに微笑み合い、唇を重ねる。 チュッ、チュッ、軽く触れ合いながら 「先輩、待たせてすみません。これからは先輩だけを見ますから。だから許して?」 甘える様な声を出すと 「嗚呼、二度と触らせない。星流お前は俺の番だ」 先輩は僕の項に歯を当てた。

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