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第23話

「アキトは僕を焦らしてるのか?」 「いや、ちがうよ。熟成してるだけ」  最初に会った時を思い出した。  肉もワインも熟成させるとうまくなると加賀美は言った。  リカルドの気持ちを熟成中ということだろうか。 「僕を弄んで楽しい?」 「とてもね」  悪びれずに答える彼が憎らしい。  計算しつくしたような無邪気な顔を見せる加賀美にリカルドは振り回されている。いや、振り回されている振りで楽しんでいる。  加賀美は遊び慣れた男で、金にも地位にも執着していないことが何度か会っているうちに分かった。おそらくリカルドにも執着していない。  今までリカルドはべったりしたつき合いをしたことがなかったし、相手もそう望まないタイプだった。後腐れなくつき合って、飽きたらさらっと別れる。。加賀美もきっとそういうタイプだ。  だから、加賀美のようなタイプは都合がいいはずなのだ。でもリカルドは、加賀美に対して違う感情を持つような予感があった。  昨日は日本から「幻の銘酒」と名高い日本酒3本とワインが3本、リカルドの元に届いた。きっとあの金で買ったのだろう。  単なるプレゼントだとは思えないから、一緒に飲もうなのか飲ませろなのか、それとも別の意図があるのか謎解きをしているところだ。 「お前がそんなに気に入ってるなんて気になるな。今度会わせろよ」  ミケーレは興味津々という顔で迫った。 「ああ、そのうちな」  そう答えたけれど、会わせるつもりは全くない。  あのきれいな生き物は結構手強い。おまけにかなり性悪だ。恋人の性別に頓着しないミケーレに会せたりしたら、とんでもないことになりそうだ。

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