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第32話
昼間の明るい陽射しが差しこむ寝室は、くすくす笑いが響いていた。
いつの間にか陽射しは初夏のものになっていて、窓の外には新緑が広がっている。
リカルドの部屋の大きなベッドの上で、二人は裸でじゃれ合って口移しでワインを飲ませあっていた。
ここで抱き合うのももう3度目になった。王子様の髪は乱れていて、色っぽさが倍増している。リカルドに憧れている女の子たちが見たら失神ものだろう。
さっきまで濃厚にセックスして戯れ合ったベッドのシーツはくしゃくしゃだ。しどけなく寝そべる加賀美にリカルドが腕を回して引き寄せた。
「ねえアキト、僕とつき合うって言ってよ」
甘えた表情でリカルドが囁いた。
今日あけたワインで加賀美からのプレゼントは終わりだ。
贈った酒は加賀美とセットだと彼は言った。
言葉通りなら、これで終わりということになる。
でもリカルドは今日で終わりにしたくなかった。
「ね、Si と言って」
「言わなかったら?」
「言うまで帰さない」
ふふと笑って加賀美は起き上がる。
「素敵な口説き文句をありがとう」
さらりと躱して頬にキスした。
「僕は本気だよ」
「そうかもしれないね」
これっぽっちも信じていない顔でうなずく。ベッドを下りようとするから、両腕を腰に巻きつけた。
「帰さないって言っただろう?」
「ええ。でも今日は早番なんだ」
仕事だと言われたら無理には引き留められない。
自分だって責任ある社会人としての地位はあるし、加賀美にも立場というものがある。イタリアンの名店で修業中の加賀美は、私生活は奔放だけれど仕事には真面目でストイックだ。
「いっそのこと閉じこめてしまいたいのに」
「そうなったら、俺に興味なんて持たないだろ?」
加賀美はわかっているのだ、リカルドが遊びで声を掛けたことを。
「僕のものになる気はない?」
「きっとすぐに飽きるよ」
「どうしてそう言える?」
「リカルドは手に入った物には執着しないタイプだろ?」
その言葉にリカルドは黙り込む。
確かに今まで、恋愛相手に執着したことはない。
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