5 / 32

第5話

「もうすぐ夏休みも終わるなあ。最初どうやって過ごそうかと思ってたけど、浩司のお陰で楽しかったわ。友達も出来たし、ありがとうな」 頭をぽんぽんと撫でられ益々むずむずした。 「二学期からなんか部活に入ろっかなー。暇だし、家に居てもめんどくさいし」 「え、学校始まったらもう遊べない?」 「んー?部活が休みの日もあるだろうし、家、すぐそばだし、遊べるんじゃない?」 純太を学校と部活に取られるような気がした。 「早く僕も中学生になりたい」 そして純太と行動を共にしたい。 「浩司が中1になったら俺は中3だなあ。高校受験ってやっぱり勉強しなきゃいけないのかなぁ」 ボヤく純太の綺麗な横顔を見つめた。ああ、二歳の年の差は無情だ。中学生と小学生の差はあまりに大きいと思う。 でも自分も中学生になれば今よりはずっと二人の差は縮まるんじゃないか。そう期待した。 純太は2学期から卓球部に入った。水曜日だけが放課後の練習が無く、その日は公園に来てくれる。キャッチボールをしたり、ブランコで語り合ったり。純太を独り占めしたいから、その日は友達も弟も連れて行かなかった。 それでも圧倒的に時間が足りない。だから純太が学校へ行くにも駅に向かうにも自分の家の前を通ることに気付いてからは、朝練に行く時間を見計らって自分の部屋の窓から純太に手を振り、タイミングがあえば帰りにも手を振った。 たまに純太が同じ制服やジャージの連中と連れ立って楽しそうに歩いているのを見掛けると、なんだかすごくイライラした。それが嫉妬だと気付いたのはずっと後だ。 早く中学生になりたい。そればかり考えていた。

ともだちにシェアしよう!