7 / 32
第7話
やっとまた目の届くところに来られた。そう喜んだのも束の間、純太が中学時代とは比べ物にならない程、モテ男なのを知って焦った。通学時の電車でもチラチラと純太に視線を送る女子高生たちがわんさかいる。ちょっとした有名人と言ってもいい。
純太から彼女が出来たという話は聞いていなかったが、これはおちおちワンコポジションでのんびり構えてはいられない。
何百回も頭の中で繰り返し、夢にまでシチュエーションが出てきたそれを決行する時だと思った。
だから純太に「好きだから付き合ってくれ」と告白したのだ。
追いかけまわしても嫌そうな顔をされたことは無いし、沢山の後輩の中でも自分は明らかに特別扱いされている自覚はあったが、半分は「浩司は弟みたいで可愛いけどそれは無理だ」と断られる覚悟をしていた。
だから、耳まで真っ赤になってこっちを見上げてきた純太が「俺も浩司が好きだ」と言ってくれた時には、雄叫びを上げてそこらじゅうを走り回りたいほど嬉しかった。
晴れて恋人同士になれても、田舎の高校生に出来ることはたかが知れていた。
日崎の家は純太にとって相変わらず居心地のよいものではなかったし、お喋りと噂話が元気の源であるうちの母親に感づかれるのはまずいので、家の周りでは仲の良い先輩後輩に徹し、なんとなく一緒に登校してるというスタイルで通した。
学校でも十分に警戒した。なにしろ純太は目立つのだ。だから懐いている後輩ポジションをアピールし、校内では決して手を出さない。
たまに繁華街へ出てカラオケボックスに入り、ドアの窓から死角になる位置で抱き合ってキスをするのが精一杯だった。
それでも十分幸せだった。告白されまくっていた純太は「付き合っている相手がいる」と公言してくれたし、二人でいるときはいつも優しく、年上らしく甘やかしてくれる。
この綺麗な男が自分一人のものだと思うだけで、誇らしく嬉しかった。
ともだちにシェアしよう!