10 / 32

第10話

上京してから、髪はいつも純太が切ってくれた。 「練習台な。カットモデル代は出せねえけど」 こっちだって散髪代が浮くのだ。だがそれよりも、社内のテストで合格してスタイリストになるまでは客の髪を切ることは出来ない純太に、俺は客よりも一足先に切って貰ってんだとか、純太のスタイリスト合格に自分も一役買っているのだと思うだけで嬉しい。 純太が真剣な顔で俺の髪を摘まみ、櫛を滑らせハサミを躍らせるのを間近で見ると、綺麗でカッコよくて可愛くて、ついつい腕を伸ばしてちょっかいを掛けたくなる。 「こら、大人しくしろ。手元が狂ってぶっ飛んだスタイルになっても知らねえぞ」 「もし客が施術中に抱きついてきたりしたらどうすんだよ。そういう練習も必要じゃん」 「ぶははっ、そんな客いるかよ!」 「だってどんな客が来るかなんて分かんねえだろ?おまけにこんなに綺麗なお兄さんが至近距離にいるんだぜ?尻ぐらいは撫でられちゃうかも」 「そん時はそいつのせいで手元が狂ったふりして、バッサリいってやる」 「クビになんないように気を付けろよ。だけど『電話番号かID教えて』ぐらいは絶対あるよなぁ。SNSでイケメン店員がいるとか拡がっちゃうかもしんねえ、ヤバい」 「ふん。お前以外にキョーミねえよ」 男前な告白に思わず「じゅん~」と両手を伸ばしたら「いい加減大人しくしねえと、バッサリいくぞ」と櫛でぺちりとはたかれた。 休みの前夜、純太はどんなに疲れていても、「よく『待て』ができたワンコにはご褒美をやらなきゃな。それに、俺もしたいから」と抱かせてくれた。 回数を重ねるごとに次第にコツを掴んだ俺に、「お前、どんどんエロくなる」と言いながら、自分が壮絶な色気を振りまきながら感じて乱れるようになってきているのは、気付いていないのか? イった後の気だるさを纏った純太のしなやかな肢体にまたすぐ欲情してしまい、もう一度と強請れば「仕方がねえなあ」と苦笑いして、「ほら、こい」と両腕を広げてくれるから甘えてそこへ飛び込むのだ。 俺が穿ち始めるとそのきれいな顔を切なげに歪め、微かな喘ぎ声の合間に「浩司、浩司」と俺の名を呼ぶ姿に、こんなに可愛くて愛しいものが他にあるだろうかと己の幸せを噛み締める。 俺はますます純太に溺れ、のめり込んでいった。

ともだちにシェアしよう!