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第15話 <第3章>

翌日の土曜は万が一見逃すことを恐れて、6時に起きた。 さてどうしたものかと二階の自室の窓から日崎家を眺めながら思案していたら、玄関のドアが開き日崎家の長女が出てくるのが見えた。 咄嗟に素早く階下へ降り、家を出て門扉の横の郵便受けに朝刊を取りに来た風を装ってうちの前を通りがかる長女に声を掛けた。 「真由ちゃん、お早う。早いね、部活?」 ジャージ姿に大きなスポーツバッグを持っている彼女は純太より10歳年下だからまだ高校生のはずだ。 話すのなんて何年振りかだから、最初はちょっと驚いたみたいだが、彼女は律儀に挨拶を返した。 「お久しぶりです。大会が近いんで一日中練習なんです」 「そう、頑張ってね」 「ありがとうございます」 やっぱりこっちから話題を振らないとダメかと思った時。 「あ、昨日、純太君が戻って来たんですよ。って言っても、もう今日の午後帰るらしいけど」 「へえ、何しに帰って来たの?」 「さあ、なんか昔置いて行った荷物?段ボールなんかを色々整理してたから、探し物かも。それじゃあ」 彼女はそう言うとぴょこんと頭を下げ、駅に向かって歩き始めた。 でかしたぞ。今の会話で色々掴めた。 純太が何をしに帰って来たのかは不明だが、突発的に一人で帰って来たようだ。 そして、帰るのは今日の午後。今日中に捕まえなければいけないということだ。純太が帰る時に捕まえるのがベストだな。 そこまで考えて、自分が何をしようとしているのか分からなくなった。 純太を捕まえる? 捕まえてどうしようというのか。 幸せな結婚生活について聞きたいわけじゃないのは確かだ。 母親が用意した昼飯をかき込んだ後は、調べ物があると言って自室に引きこもり窓から日崎家を監視する。 純太に俺がここにいることを気取られないように、車は近所のコインパーキングに移し、すぐにここから退去できる準備は午前中に済ませてある。 2時ごろ、日崎家の玄関が開き、純太がゴミ袋のようなものを両手に出てきた。それをガレージの隅に置くとまた家へ戻り今度は段ボールを持って現れ、またガレージへ。大掃除でもやってるのか? しかし4度目に現れたときは、ガレージへは向かわず、門から外へ出てきた。俺はカバンを掴むと部屋を飛び出した。

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