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第17話

純太の姿がドアの向こうに消えたのを確認し、脱ぎ捨てていったボトムに手を伸ばす。予想通り、尻ポケットに入ったままのスマホを取り出した。 電源を入れると当然の様にロック画面が出た。そりゃそうかと思いながら、思い当たる4桁の数字を入力するとあっさり解除できてしまった。マジかよ、何年同じ暗証番号使ってんだよ。 手早くあるアプリを開き、ちょっとした細工をする。他にも覗いてみたい気がしたがうっかり子供の写真でも見てしまったら萎える。 ふと、純太がシャワーを使った理由(わけ)は、久しく使っていない後孔を自分で解すためかも知れないと気が付いた。冗談じゃない。固く閉じたそこをこじ開けて思い出させるのは俺だ。 手早く衣服を脱ぎ去り、浴室のドアを開けると目を丸くした純太が「せっかちだな」とからかうように言うので「俺が入っている間に、お前が逃げるかも知れないからな」と(うそぶ)いた。 ベッドルームに戻ると、純太は遮光カーテンを引き、自らベッドに腰を下ろした。 腰にバスタオルは巻いているが、晒されている上半身だけで早くも俺は気が昂り始めた。記憶の中とたがわぬ華奢な肩のライン、綺麗に浮き出た鎖骨に薄暗い中でも分かる白い肌。きっと女には触られていない胸の印。純はあそこが凄く感じるんだ。 純太の肩に手をかけ、その体をゆっくり押し倒した。見下ろす純太の顔は6年経った今でも綺麗なまんまで。 またこの男を抱くことが出来るなんて、夢じゃないよな、これ。 だが、顔を近づけていくと「やっぱ、キスはやめとこう」なんて。 だけど今更、そんな言葉に傷付くのは可笑しいか。 お陰でこいつはもう結婚していて、人のモノなのだという現実を突きつけられ、タブーに踏み込むこれからの行為に仄暗い背徳感というスパイスが加わった。 キスの代わりに首筋に鼻を埋め、首筋を甘く食めば、同じボディーソープの香りに混じる純太の匂いが、ただひたすら恋人に溺れ夢中で貪っていたあの頃の記憶を連れてくる。 指が、唇が、ちゃんと純太を覚えている。 ここを撫でられるのが純は弱いんだ。ここを吸うと純は腰を震わせ身を捩るんだ。 刺激にツンと立ち上がった胸の尖りに、緊張を漂わせていた純太の体も記憶を取り戻し始めたと思いたくなる。 「なあ、男に抱かれるのはいつぶりなんだ」 「……6年ぶりだ」 そうか。今度は浮気することなく、女を大事に抱いてきたのか。一度女を抱いたらその快感から抜け出せなくなった?ちらと浮かんだ「妻を愛しているから」という理由は、考えないようにした。

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