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第21話
男の事が気になりながらも、純太の後を追った。純太は真っ直ぐ2ブロック程歩いた後、道沿いの建物に入っていった。
あれ?このビルは・・・1階にコンビニがあるのを認めて、やはりと思う。昨夜検索したビルだ。
ビルの入り口まで急ぎ、中を窺うと奥にエレベーターホールがあるが、人の姿は無かった。上昇しているエレベーターのランプは5階で止まった。
ビルの入り口に貼られている案内板によると、やはり3階までが飲食店。4階から8階までがウィークリーマンションでフロントは4階とある。そうすると純太は昨夜からこのウィークリーマンションに滞在しているということか。謎が深まる。
だが、ここからどうしたものか。フロントに聞いたところで、客の部屋番号なんかは教えてくれないだろう。考えてみれば、未だ純の家も職場も掴めていない。まだこれから動きがあるかもしれないから、近場で飯でも食いながら待機しておくか。
ビルの外へ出て、まわりにファーストフード店でもないかとぐるりと見渡した時。こちらを見ている男と目が合った。
あれは、先程まで純太と一緒に居た男だ。俺が純太を尾行していたのがバレた?
お互いに目を離せずにらみ合うように立ち尽くす。ええい、いっそぶつかってあいつが何者か突き止めるか。こっちの素性まではバレていまい。
だが先に動いたのは向こうだった。固い表情でこちらへ向かってくる。
思わず身構えてしまう。まさか、ナイフとか持ってるヤバい奴じゃないよな?
だが彼は数歩の距離を残して立ち止まった。
「あの…突然すいません」
「なんでしょう」
遠慮がちに掛けられた声を意外に思いながら、男を観察する。遠目で見るよりこうして正面から捉えた方がなかなかの男前だと分かった。
何か言葉を続けようとしながら、逡巡しているのが見て取れる。
「えっと、この辺の方ですか?」
は?何言ってるんだ?
「いえ、違います。なにか?」
「いや、えっと…」ともごもご言いながら、額に大きな手をやり暫く悩んだあと、彼はとんでもないことを言い出した。
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