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第25話

「それでも私は諦めきれなかった。それに、ちょっと腑に落ちないこともあったんです。彼と知り合ったきっかけは彼の勤める美容院だと二人は言いました。だが、よくよく聞いてみるとその美容院の場所が彼女の生活圏から全く外れているのです。家からも職場からも遠く離れた美容院に普通行くでしょうか? それに、二人は近く結婚するつもりだと言いましたが、彼女の性格や価値観からまだアシスタントの若者と勢いで結婚という選択をするのは不自然な気がしました。私に諦めさせるために、嘘を言っているんじゃないかと思ったんです。 だから、調べたんです、二人の事を」 「調べた?」 「はい。その結果…二人は恋人なんかではなく、同じ目的を持った同志だということがわかったんです」 恋人では無かった!? 「同志?どういうことです!?」 勢い込んで訊ねる俺の眼を品川はじっと見つめている。そしておもむろに口を開いた。 「ここから先を友永さんにお話しすべきかどうか、一晩中考えました。なぜなら、これは松野さんが必死であなたに隠そうとしてきたことだからです。だけど、私には、私の立場だからこそ思うところがあるのです。 あなたは一昨日、偶然松野さんを見つけ接触した。それは昨日本人から聞いています。だけど、あなたはそれだけでは済ませず、わざわざ東京まで彼を追って来た。それは何故です?6年経った今でもあなたの中に松野さんに対する強い想いが残っていたからではないですか?」 「6年前、俺もあなたと同じ様に愛していた相手に裏切られ、大きなショックを受けました。さよならも言わず忽然と姿を消した彼を必死で探し回った。 彼を想う気持ちが強すぎた分、失ったものが大きくて辛くて。俺がこんなに苦しいのは純太のせいだ、全部純太のせいだって酷く恨みました。 でも、昨日東京まで行って思ったんです。俺は胸にぽっかり開いた穴を憎しみを詰めること埋めてきた。そして俺は純太に未だ強い執着がある。けれどそれは、復讐がしたいからじゃない。俺は現実を受け入れるきっかけが欲しいんだって。俺にとって全てだった純太を、彼がした選択ごと全部を受け入れるときが来たんだって…だから、今の純太の暮らしを知りたかった」 言葉にして、やっと自分の気持ちが理解できた気がした。

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