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第3話

 「か、かっか、か、かいちょ」  生徒会室の前で田中は大河内を捕まえた。  「ああ、田中君だったかな?」  大河内の顔を直接見ては話ができないと田中は思った、話すことさえできなければこの先はない。カメラを構えるとレンズ越しに大河内を見る。これなら話が出来る。いきなり構えられたカメラに大河内が一歩あとずさった。その大河内の表情をみて田中は確信した。  「なっ」  「会長、お話があるのですが」  「そのカメラは何だ!」  「これは僕の身体の一部です、気にしないでください。それより会長は写真を撮られるの好きですか?」  「どういう」  カメラのシャッターを切る、軽い音が誰もいない廊下にこだまする。  「っつ、止めろ」  「ああ、やっぱり。会長は撮られると、いえ誰かに見られると言う事実に興奮するんですね」  「違う!」  「ここじゃ話できませんから、そのドアを開けてください」  「誰に命令しているんだ」  「命令?まさか、違いますよ、お願いしています」  「ふざけるな」  「真剣ですよ」  「黙れ!」  「会長、ここで言い争っていると人が来てしまいます。早くその後ろの扉を開けてください」  一瞬躊躇ったが、大河内は廊下を見渡し観念したように扉を開いた。後をついて入ろうとした時に入り口に躓き転びそうになった田中は大切なカメラを庇って床に背中から転んだ。肩甲骨のところをしたたか床にぶつけたがカメラは無事だった。  「おい」  「ふぇっ、だ、だいじょう、ぶ、です」  カメラがないとやはり口がきけない。普段はだれとでも普通に話が出来るのにどうしてか大河内に対してだけは無理なのだ。カメラを構えて改めで大河内をレンズを通して見る。怯えた野生動物も美しいと心から思った。  「何が望みだ、というより何故こんなことをしている」  「会長が好きだからです。会長が僕をおかしくするのです」  「支離滅裂だ」  「僕が会長の全ての瞬間を美しく切り取ってファインダーに収めたい」  「は......」  「想像してみてください、響くシャッター音、たくさんの視線。どうですか?会長」  「で、でていけ」  「説得力ないですよ」  レンズを少し下方に向けてシャッターを切る。  「ぁあっ」  「ね?言葉より語っていますよ会長の身体が」  「や、やめて、くれ」  「ああ、会長。駄目ですそんな泣きそうな顔をしては。会長は常に凛々しい人でなくては。僕の前では王として君臨していなくては」  追い詰められても獅子は獅子であってほししい、その野生動物を抑え込み狂わせたい。征服された大河内の姿が見てみたいのだ。続けて何度もシャッターを切る、連続する機械音以外何も聞こえない部屋。  カーテンが揺れる、窓が少し開いているのだろう。外に漏れ聞こえないように左手を口に当てた大河内の頬は上気し、涙目になった瞳が揺れる。  「よ、せ......」  ソファに崩れるように身体を落とすと、乱れた呼吸で熱い視線で見上げてくる。  「会長、僕に僕に触ってください」  身体をずいとそばに寄せる。大河内の手が田中に伸びてくる。その手の行く先をカメラで追う、しっかりと自己主張していた田中の股間に伸びてきたその手が思い切り強く起ちあがった田中自身をつかんだ。  「い、いったぁい、痛い!離して、痛いっ」  「いい加減にしろ!」  股間を抑えて身体を丸くしうずくまる田中を一人残して、大河内は生徒会室から飛び出していった。  「痛い、ああでもこうじゃなきゃ。本当のあなたを知っているのは僕だけですよね、大河内会長......」  

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