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第5話

三日後。 鉄平はバイトに向かっていた。まだ少し不安だが、志狼と一緒なら大丈夫だと思える。 大丈夫! 絶対に俺の番はしろうだもんね。 そう思って鉄平は足取り軽く歩いていたが…… 「あれっ……!?」 急にくらくらと立ちくらみをして、ヨロヨロと壁に手をついた。 お昼頃、少し微熱っぽかったので風邪気味なのかと思っていたのだが、急激に熱が上がった感じだ。 鉄平は路地裏に入り、壁伝いにずるずるとしゃがみ込んだ。もう一歩も動けそうにない。 「風邪? でもなんか変……あ!」 ─────もしかして発情期!? 鉄平は震える手でスマホを取り出し志狼に電話をした。だが仕事中なのか志狼は出ない。一度切って、もう一度かけ直そうとしていたとき…… 「やっぱりΩだよ!」 「!?」 「マジで!? 俺、初めて見た」 大学生風の男が二人、路地裏にしゃがみ込んだ鉄平を見下ろしていた。 「おい……すげぇ甘い匂いするんだけど」 「発情期の匂いだ……てことは君、フリーなんだね」 番のいるΩは番相手にしか発情しなくなる。誰彼かまわず甘い匂いをまき散らすのはフリーのΩである証拠だ。 「ひとり? 体つらいでしょ。休憩できるとこ行こうか」 男は親切そうなそぶりで鉄平の手を引いて立たせた。 「あっ」 その拍子に鉄平の手からスマホが落ちた。鉄平はスマホを拾おうとするが、男に抱き寄せられてしまう。 「やだ!はなして……ッ!」 「イイ子だから、おいでって」 男二人に両脇を抱えられるようにして、鉄平は引きずられながら路地裏の奥へと連れて行かれてしまう。 「やだやだっ!」 落としたスマホに志狼からの着信を知らせるメロディが聞こえた。 「あっ! しろう! 助けて! し……うぐ」 男に口を塞がれた鉄平は心の中で叫んだ。 ─────しろう!! 助けてっ!!

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