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第6話
由美は可愛いく言いよる男性はそこそこいたが、夢見る少女の心を持つ由美にとっては王子様と違っていたのだろう。ただ神坂武範 は、由美にとって理想以上の相手だった。
武範が社長室で見初めたのは由美だったのか、涼だったのか。
ブランド品のプレゼント、一流レストランでの食事。利発ではない由美が起こす失敗も可愛いと許し、一人息子の翔也まで紹介し、よく一緒に出掛けた。
当時小学生だった翔也は、一人っ子で母もいない寂しさがあったのか、由美にも涼にもすぐ懐いた。由美は翔也を可愛がり、涼も弟が出来たようで嬉しかった。
由美が武範から婚約指輪を贈られ、清掃員の仕事も辞めた後、涼は武範に呼び出された。
「俺は由美のしたい事望む事何でも叶えてあげるつもりだ。その対価として君を抱きたい。拒否なら君達親子とは縁を切る事になる」
涼の混乱や嫌悪など想定済み、それは周到に張られた罠だった。婚約破棄は由美を絶望に追い込み、その頃すでに充分親しい関係となっていた翔也と別れる事になる。
「君は良くても、由美はかつての暮らしに戻れるかな?そもそも仕事も辞めて、生活自体成り立たない。俺は翔也に、母と呼ぶ人がいなくなったとまた伝える事になる。あんなにお母さんとお兄さんが出来ると喜んでいるのに。君はとても優秀らしいね。由美は大学に行かせたいと願っている。君がOKさえすれば、誰もが幸せになれる」
ホテルやマンション、駐車場など多角経営する不動産会社の社長夫人の座が目の前にあり、幸せの絶頂にいる由美と、可愛い翔也。
涼に逆らうという道はなかった。
武範ははじめからサディストな面を隠さなかった。
「由美は君を一人で育ててくれたんだろう。これくらい我慢しなきゃね。俺の望みを君が引き受けてくれたら、由美にはとても優しく接するよ」
身体以上に心を縛り付けられた。
鞭で打たれるような事を、由美に味あわせるわけにはいかない。
武範は由美に贅沢をさせ、友達がわりのような気の良い真紀というお手伝いさんも雇い、毎日楽しく過ごさせている。
そして涼は5年間、時々呼び出され、サディストの欲を満たす相手となっている。
お金はあるのだから商売の男を雇えばいいと言ったら、見知らぬ他の客と寝た商売男などあり得ないと一蹴された。
「私は独占欲が人一倍強い。そしてね、望みを叶える事に躊躇はない。良家の子女というプライドが高い扱いにくい女だった翔也の母親には、若い男を仕掛けて自ら出て行くように仕向けた。おかげで翔也の親権を裁判もなく手に入れたよ」
この男は何をするかわからない。
母の由美と、兄と自分を慕う翔也を傷つけないため、涼は言われるままに身体を差し出す。
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