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第10話
卒論が終わっても、体調が悪い、サークル打ち上げ、就職先の事前研修など、涼は武範からの呼び出しのキャンセルを繰り返した。
そして糺との逢瀬を重ねた。
4月、涼は会社に入った。最初の給与を得たら義父に従わないと告げる。そう決めていた。
土曜日、涼は母の由美に外でランチしようと呼び出され、翔也を連れて行くと武範もいた。
武範は笑顔で出迎えたが、目は笑っていない。
「就職と高校合格の祝いをしたくてね。サプライズという程じゃないけど」
武範が言う。
「翔也の合格祝いは、スマホの最新機種への変更でいいな?」
「やった!」
「機種はもう入荷されてる。携帯の店も14時に予約してあるからこの後由美と行けばいい」
「マジ?超嬉しい」
「涼は社会人だから時計。ロレックスとオーデマピゲをM百貨店の外商で何種類か用意させてるから、行こう」
「いらない、そんな高級時計」
「せっかく武範さんが言ってくれているのに」
由美が涼をたしなめる。
「いらないって」
「買って貰いなよ。その時計、要らなくなったら俺に頂戴」
翔也が笑顔を向けた。
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