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事のはじまり②

学校が終われば、弟達を預けている幼稚園にまず迎えに行って、夕飯の買い物を済ませ、彼の家に真っ直ぐ向かう。 一緒に暮らし始めて2か月。 僕達兄弟を育てる為、水商売をしていた母。毎回違う、知らない男が家に出たり入ったりで、生活は荒む一方。奨学金で辛うじて高校には通ってたもの、幼い弟達は幼稚園にも行かせて貰えず、ゴミで溢れた家に一日中押し込まれ、母の交際相手に何度叩かれたことか。 高校がバイト禁止で、働く事も出来ず、家出の為の貯金も出来ない。夏休みの間、てっとりばやくお金を稼ぐため、援助交際に手を染めた。そこで知り合った男性とラブホに入る時、彼に声を掛けられた。 「大橋、そんな男と援交するなら、俺と付き合え。生活の面倒も、弟達の事も、全部俺に任せろ」 まさか、学年主任の神山からそんな言葉が出るとは思わず、吃驚した。冗談だと思ったけど、次の日には、僕達を迎えに来てくれて、彼の住むマンションで一緒に暮らし始めた。彼は、弟達を幼稚園に入園させてくれた。 「兄ちゃんは、ご飯一緒に食べないの?」 「うん、先生が帰ったら一緒に食べるからいいよ」 「そっかぁ」 いつも帰りが遅い彼。 彼が帰ってくるまで翔真と、誠悟を寝かし付けるのが、僕の役目。 「ご飯食べたらお風呂入ろうね」 大好きなカレーをムシャムシャと頬張る二人を、頬杖をつきながら眺めていると、視線が自然と手首に向いた。 縄の跡が生々しく残るそこをそっと指で撫でた。 それだけで、期待に胸が高鳴り、体の奥が甘く疼いた。

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