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悪魔に拐われた2匹の子兎

「心、かぁいい‼」 「やっぱ、似合ってる‼」 クラスの女子に取り囲まれ、既に逃げ道はない。ささやかな抵抗を試みたもの、多勢に無勢。結局、もふもふの耳のカチューシャを頭に、尻尾をお尻にそれぞれ付けられた。 にしても寒い。足がすーすーして、違和感半端ない。 「おっ‼なかなか似合うじゃないか」 神山は満面の笑みを浮かべ、さっきからニヤニヤしっぱなし。 その神山は、黒いマントをなびかせ、頭に白い角を生やし、悪魔の仮装。 『That of treatーーお菓子くれないと、悪戯するぞ‼』 「っか、全然怖くねぇし」 クラスの男子にはいまいち受けが悪い。女子にも、怖いより気色悪いと言われる始末。 まぁ、当の本人が気付いてないから、まぁあ、いっか。 ファションショーの会場となる体育館へ移動する途中、僕と同じバニーガールの仮装をしている男子生徒に出会った。保健室の吉川先生と腕を組み、周囲の目も気にせず、ラブラブ、イチャイチャしてて、冷たい視線に晒されても全く動じない。 「毎日違う子を保健室に連れ込んで、真っ昼間からセックスしているらしい。前の学校では、何人かの親が乗り込んできて、それで辞めて、うちの高校にーー」 「吉川先生って、女子に絶大な人気があるのに⁉」 「両刀だから、どっちもイケルらしい」 「どっちもって・・・」 神山は、戸惑う僕の手首を引っ張り、足早に二人の前を素通りしようとした。 「神山先生。その子が、今、夢中になってる玩具⁉味見させて欲しいな」 すらりとした長身に、甘いマスク。にこやかに笑いながら吉川先生が神山に声を掛けてきた。 「吉川先生、心は、俺の大事な恋人ですよ。玩具じゃありませんよ。それに、身重の奥さんがいるんでしょ。少しは慎んだらどうですか⁉」 ーー恋人って、今、確か・・・ーー 神山の口から初めてその言葉を聞いた。 いままで1度たりと言われた事がない言葉に、胸がギューーッと締め付けられた。

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