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第11話

「ぅ…。まだ気持ち悪い。」 帰宅後、僕は涙を流すことも許されない様に嘔吐を続けてた。 腹の中に何もなくなった今は胃液ばかりが出てくる。 「ピンポーン」 誰だろ。 気付けば20:00を過ぎていた。 こんな時間に僕の家に来る人は今までいないと疑問に思いつつも 僕は松葉杖つきながら玄関に向かう。 「誠‼」 玄関を開けた瞬間に僕は肩を掴まれバランス崩してしゃがみこんでしまう。 「お前足‼足大丈夫なのか⁉」 押し倒した本人は僕の左足の上に乗ってることに気づいてないのか心配してくる。 「し、ろう?今とても痛いよ? とりあえずおりよっか」 あ、わりぃ、 と今気づいたようで僕を押し倒した東堂白羽はゆっくりとその場から離れた 「俺、お前が怪我して病院行ったって聞いて心配で家まで行ったのにお前の家いつのまにかさら地になってるからさ。 そこでまた学校戻って住所聞いてここまで探し回って。 本当に心配だったんだからな!」 そうだ。 僕は高校に入ってから親に独り暮らしをしたいと頼み込んだ。 向こうも元々そのつもりだったらしく潔く段取りは進み家も売った。 親方もまた転勤になってたみたいでそれで独り暮らしを認めたのだろう。 必要なお金はいつも通帳に入れてくれてるから別に不自由してないしむしろ自由になれたと思う。 僕はあえて学校から少し遠くした緑の多い土地に移った。 「ごめんね。必要ないと思って伝えてなかったよ。 でもなんで前の家行ったの? 記憶はまだ戻って無いんじゃ、」 「思い出したよ。」 「え?」 「いや、全部じゃねぇ。本の一部に過ぎねぇ。 ただ、お前を初めて遊びに誘って一緒に帰るとこまでは思い出した。」 小学生の時僕はこっちに転校してきて初めは友達ができなくていつも一人だった。 そこに声をかけてくれたのが隣のクラスの白羽だった。 それから僕たちはよく一緒に遊んでいた。 「そっか。でも嬉しいな。 それだけでも嬉しい…。」 自分でも何いってるか分からない。 ただ、このまま一生僕のことを思い出さなかったらどうしようって思いが僕には確かにあった。 その思いが覆されたことに安堵しているのだろう。 「それで、足は大丈夫なのか? 試合あるんだろ?インターハイ。」 白羽はわかってて言っている。 包帯ぐるぐるで松葉杖ついて今も痛くて僕は左足を抱えている。 「あぁ、うん、まぁ、ベンチは暖められるよ。」 僕は遠回しに試合に出れないことをしめす。 「やっぱり無理なのか。」 「白羽が気にする必要は全くないからね? 僕が素人に対してむきになったのが悪いだけだから。」 そう。この結末を生んだのは紛れもない僕のせいだ。 「誠。本当にそう思ってるのか?」 「どういう意味?」 僕は純粋に意味がわからず聞き返す。 「その怪我はお前のせいじゃねぇよ。」 何が言いたいのかさっぱりわからなかった。

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