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第3話

「優希……!? な、なんて格好してるんだ!」 「だって今日はハロウィンでしょ? 僕もパーティーに混ざりたくって、来ちゃった」  父親の誠一郎はこの児童館の職員だ。真面目で、優しくて、子どもたちからも好かれている、理想の父。  そして、優希の恋人でもある、愛しい人。 「だからって、なんでそんな……魔女の仮装なんて……」 「パパのために決まってるでしょ。どうかな、似合ってる?」  ワンピースの裾を掴んで、ちらりと太ももを見せつける。縞模様のニーソックスとの境界、絶対領域が絶妙なバランスで、誠一郎は思わず息子の姿に見入ってしまった。 「……優希、やめなさい。もし人に見られでもしたら……」 「人なんていないけど。でも、そんなに人目が気になるなら、僕、いい場所知ってるよ。二人きりになれる、とっておきの場所」  キーボードの上で固まっていた大きな手に指を絡ませる。ゆっくりと、熱のこもった手で誠一郎の緊張をほぐしていった。  だがそれは逆効果で、誠一郎はますます硬直してしまった。いつまでたっても、実の息子とこういう雰囲気になるのが苦手らしい。  くすっと笑い、優希は悪戯をするようにその手を持ち上げて、自分の胸へピタリと当てる。 「僕の胸……ドキドキしてるの、わかる……?」  誠一郎の手は震えていた。優希の平らな胸に触れて、緊張がピークに達したのだろう。慌てて優希の胸から手を離し、「バカなことをするんじゃない!」と声を荒げた。

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