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第4話

「っ……!」  誠一郎はいつもこうだ。優希が欲しいものを、簡単には与えてくれない。キスだって、セックスだって、愛の言葉だって。真面目すぎるから、こういうことに関してはとても厳格なのだ。  そのくせ、一度タガが外れると堰を切ったように欲望に忠実になる。  そんなところは嫌いじゃないし、むしろ好きなのだけれど……たまには誠一郎の方から求めて欲しい。今日だって、せっかく可愛くしてきたんだから、褒めて欲しかった。 「もしかして、怒ったの……?」  誠一郎は黙り込んで顔も見てくれない。胸がチクチクと痛んだ。こんな気持ちになりたくて仮装してきたわけじゃない。  たった一言、「可愛いじゃないか」とか「似合ってる」とか、笑顔でそう言ってもらいたかった。  だって、今日はハロウィンなんだから。  本来の祭りの趣旨とは違うかもしれないけれど、この夜を特別なものにしたくて、こんな格好で誠一郎に会いにきたのだ。  だって、誠一郎のことがすごくすごく、好きだから。  その気持ちを、少しでもいいからわかって欲しかった。 「パパ……」  大きな瞳に涙が浮かぶ。泣いたってどうしようもないのに……。そう思った、その時だ。ガタンと音を立てて、勢いよく椅子から立ち上がった誠一郎は、そのまま優希の手を掴んでズカズカと歩き始めた。あまりに強く握られたせいで、持っていたバッグを落としてしまったが、そんなことは気にしていられなかった。

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