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第5話

「パパ!? どうしたの!? 痛いよ、手っ……!」 「……お前だからなッ」  帽子がずれて、誠一郎の姿がよく見えない。けれど、声の感じから誠一郎はひどく切羽詰まっていることがわかった。 「なに、言ってるの? どこ行くのっ……パパ!?」  どんどん早足で進むから、途中で帽子を廊下に落としてしまった。優希は「あっ」と小さな声をあげたが、誠一郎は優希の手を引っ張って強引に突き進む。  連れてこられたのは、『研修室1』と書かれた、一番奥の部屋だった。  誠一郎は後ろのポケットから鍵束を取り出し、無機質な部屋の扉を開く。  その中へ優希を引き込むと、今度は後ろ手に鍵のつまみを回す音が響いた。  この場所、この状況。どういう意味か理解できないわけがなかった。 「煽ったのはお前だからな……今夜ばかりは、いい父親の顔なんてしていられないぞ」  部屋の中央にはグレーの長机が円になるように置かれている。その一つに押さえ込まれると、いきなり唇を奪われた。 「んんっ……ん、う……!」  熱くて激しい。唇だけじゃない。舌まで燃えるような熱を持っていて、身も心もキャンディのように蕩けてしまいそうになった。 「んっ……パパ…ぁ、っ」 「優希……ッ」  長く深い口づけが終わると、誠一郎の手がスカートの中へ滑り込んできた。大きな手に撫でられるとそれだけでひどく感じてしまって、優希ははしたない自分を恥じた。

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