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それからというもの、バイト中に彼の姿を探す時間が増えた。
(あ、今日もまた違う人だ…)
いわゆる同伴というやつだろうか。隣に連れている女性は毎回のように変わっていて、最近では唖然とすることもなくなった。
カゴの中は多かったり少なかったり、日によって変わるものの、ミネラルウォーターとチョコレートは欠かせないようだ。決まって女性の方がお金を払うのにも慣れた。
でも、今日は―――
「えっ、ルイに出させるなんて悪いよ!」
「良いから。いつものお礼だと思って。…ね?」
僅かに口角を上げた彼は、財布に手を掛ける女性の手をやんわり止めて。
「…はい」
「え、あ…2000円…お預かり、します」
彼が払うのは初めてだ。何度も連れてきた彼女達ではなく、あまり見たことのない…いや、恐らく初めてであろうこの女性は気に入っているということか。
(なんて、女性の顔ぶれを把握してるのもだいぶ気持ち悪いよなぁ…)
「じゃあ今度は私が奢るね?」
「ミカちゃんは気にしすぎ。大した額じゃないんだから俺に出させて」
「…380円のお釣りになりま、す…っ!?」
会話を遮らないように小声でお釣りの存在を告げた瞬間、ふわりと温もりに包まれる。
「もうルイったら男前なんだから~!今日もたくさん飲もうねっ」
「…じゃあ、行こうか」
それは一瞬。不自然ではない程度の接触、だったと思う。
緩くカーブを描いた口元は、それからしばらく脳裏に焼き付いたままだった。
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