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11.
「アナタの見立て、だいたい合ってるものね。動物的な勘っていうのかしら?その職業にはうってつけよ」
「まあ…だから、指名してもらえるんじゃないかな」
絶対それだけじゃないのに、と呆れ顔で呟く彼は最近どことなく儚い雰囲気になってしまっている。
気になっているものの、リンさんから話されない内はそのままにしておこうと決めていた。
「渡す時は1人で行ったの?」
「うん。…と、いうより最近ずっと1人。これからも、たぶん女の子は連れて行かない」
「………ほう」
静かに告げる俺の様子に何かを感じ取ったのだろう。ぽん、と肩に手を置いただけで特に追求してくることもなかった。
「それより、さ。その…何も思わない?」
「うん?」
「だって、相手…男の子だよ?」
ナンバーワンホストの気になる相手が男の子だ、なんてどこぞの漫画じゃあるまいし。いくらリンさんが綺麗な女性に見えても偏見は持っているかもしれない。
「なぁに、今さら?興味のない話なら相談に乗ったりしないわよ。それに、良く言うじゃない―――」
恋愛に性別は関係ない、って。
噛み締めるように紡がれたその言葉は、他人事ではないのだと教えてくれる。
「……リンさん?」
「あら、話してなかったかしら?」
少し不安に思って上半身を捻ると、珍しく困り顔。
「…彼氏とね、上手く行ってないのよ」
「かれ、し…」
なるほど。全てが腑に落ちた。
俺も詳しく聞こうとはせず、黙って正面に向き直る。
先ほどの彼がそうしてくれたように。
「今度飲みに行きましょ、少しくらい愚痴を言っても罰は当たらないわよね?」
くすりと笑う美人を見つめて、ゆっくり頷く。
「さて、仕事仕事~!」
ひとつ手を打って後ろの棚へ向かう彼の潤んだ瞳が見えないように、そっと目をつぶった。
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