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勤務の終わった朝。眠い目を擦りながら店を出る。歌舞伎町といえど早朝は人もまばらで、ぶつかる心配はない。 ゆっくり駅へと向かい、ホームでスマホを取り出した。電車に乗れば確実に寝てしまうだろうから、待っているこの時間で。 名刺には電話番号とメールアドレス、そしてLINEのID。 少し悩んでメールの画面を開いた。 件名に『芹生です。』これは普通だと思う。 さて、本文をどうするか…。 勤務中、ずっと考えていたものの案外難しい。 『おはようございます。 連絡先、教えてくださってありがとうございました。 いつもお店に来て頂けて嬉しいです。 またお待ちしてますね!』 業者のダイレクトメールかよ…と自分でツッコミを入れてしまう。 行き詰まって待合室の天井を見上げる。 ふと、重ねられた手の温度を思い出した。 最後に付け足すこの一文で、彼は分かってくれるだろうか。 『それと、昨晩はすみませんでした。』 誤字脱字がないかもう一度チェックして、送信。 仕事はないはずだから、きっとまだ眠っているだろう。 いつもLINEを使っているから、メールは久しぶりだ。 ID検索からの友達追加という行動、それに無料通話が簡単に出来てしまうこのツールを使う勇気はなかった。 (アイコンが写真だったら、多分まともにトーク画面見れない…) メールをする相手は彼くらいだから。 LINEのように埋もれてしまうこともないはずだ。 (まあ、そこまで連絡しないと思うけど) 電車の到着を告げるアナウンスが聞こえて、立ち上がり伸びをする。 (連絡先…何で俺に教えてくれたのか、だけは聞きたいな) 返事が来たら、また考えよう。
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