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それから何度か当たり障りのない話題をやり取りしたが、肝心の本人には会えていない。 俺が変に理由を聞いたから、プレッシャーに思わせてしまったのだろうか。 雑誌を並べる手が自然と遅くなり、ついに止まってしまう。 「よっ、なーにシケたツラしてんの?」 ふわりと匂うのは覚えがある香水。 「…ハルさん、」 俺がバイトを始めてからすぐ顔馴染みになったお客さん。髪色は頻繁に変わるものの、いつものように屈託なく笑う笑顔はそのままで。少し心のもやが晴れる気がした。 「タバコ切れちまってさ~、ちょいと面倒な客に付かされてたし。抜けてきちゃった」 「え、そんなお茶目に言うところじゃ…」 「いーのいーの、芹生くんにも会いたかったから」 軽く頭に手を置かれて、戸惑う。覗き込んでくる表情は、先ほどと打って変わって真剣そのものだ。 「……で、何があった?」 そんなに俺の様子はおかしかったのだろうか、とか。ルイさんのことを話すべきか、とか。 どう答えて良いか分からず目を泳がせていると、後ろを通りかかった細田がひとこと。 「こいつ、最近イケメンホストさんが来ないから落ち込んでるんすよ~!な、芹生?」 「イケメンホスト?」 否定する前にハルさんが食いついた。すっと細められた目は心なしか剣呑で。 ああ困った、彼も相当な美形なのに…気を悪くさせてしまっては大変だ。 元凶を睨むが1人そそくさと飲み物コーナーへ逃げて行った。後でシメる。 「あ、あの…ハルさ―――」 「俺が知ってるイケメンはルイと雅だけかな~」 「へ………」 ころりと雰囲気を変えた彼のペースにまるで着いていけない。

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