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17.
それから何度か当たり障りのない話題をやり取りしたが、肝心の本人には会えていない。
俺が変に理由を聞いたから、プレッシャーに思わせてしまったのだろうか。
雑誌を並べる手が自然と遅くなり、ついに止まってしまう。
「よっ、なーにシケたツラしてんの?」
ふわりと匂うのは覚えがある香水。
「…ハルさん、」
俺がバイトを始めてからすぐ顔馴染みになったお客さん。髪色は頻繁に変わるものの、いつものように屈託なく笑う笑顔はそのままで。少し心のもやが晴れる気がした。
「タバコ切れちまってさ~、ちょいと面倒な客に付かされてたし。抜けてきちゃった」
「え、そんなお茶目に言うところじゃ…」
「いーのいーの、芹生くんにも会いたかったから」
軽く頭に手を置かれて、戸惑う。覗き込んでくる表情は、先ほどと打って変わって真剣そのものだ。
「……で、何があった?」
そんなに俺の様子はおかしかったのだろうか、とか。ルイさんのことを話すべきか、とか。
どう答えて良いか分からず目を泳がせていると、後ろを通りかかった細田がひとこと。
「こいつ、最近イケメンホストさんが来ないから落ち込んでるんすよ~!な、芹生?」
「イケメンホスト?」
否定する前にハルさんが食いついた。すっと細められた目は心なしか剣呑で。
ああ困った、彼も相当な美形なのに…気を悪くさせてしまっては大変だ。
元凶を睨むが1人そそくさと飲み物コーナーへ逃げて行った。後でシメる。
「あ、あの…ハルさ―――」
「俺が知ってるイケメンはルイと雅だけかな~」
「へ………」
ころりと雰囲気を変えた彼のペースにまるで着いていけない。
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