20 / 330

20.

「リンさん、ちょっと流石に酔いすぎ…」 「ほーら5軒目行くわよぉ~!」 酔っ払いの肩を抱いて歌舞伎町へ向かう。このまま帰すのは心配だったから、彼のサロンで面倒を見ようと思った。 「こんな男の愚痴聞いてくれるなんて、ルイは優しいのね~」 「その見た目で男って言われても…」 頭を撫でてくる手を掴んで苦笑い。 恋人のことで相当参っているようだったし、吐き出すだけ吐いて楽になってもらおうと飲みの誘いに乗った。 「…ねえ、ルイ」 ひそ、と耳打ちされる。 「友達として、大好きよ。本当に感謝してる」 何を今さら。お世話になっているのは俺の方だ。 「…うん、知ってる。でも最後のキスは余計だったかな?酒臭いし…」 「あはは、リンちゃんからのサービスよ!」 豪快に笑う彼を引きずるようにして、横断歩道を渡ろうとしたその時。 「…あら、あの子かなり美人ね」 目線を辿って、 凍りついた。

ともだちにシェアしよう!