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「リンさん、ちょっと流石に酔いすぎ…」
「ほーら5軒目行くわよぉ~!」
酔っ払いの肩を抱いて歌舞伎町へ向かう。このまま帰すのは心配だったから、彼のサロンで面倒を見ようと思った。
「こんな男の愚痴聞いてくれるなんて、ルイは優しいのね~」
「その見た目で男って言われても…」
頭を撫でてくる手を掴んで苦笑い。
恋人のことで相当参っているようだったし、吐き出すだけ吐いて楽になってもらおうと飲みの誘いに乗った。
「…ねえ、ルイ」
ひそ、と耳打ちされる。
「友達として、大好きよ。本当に感謝してる」
何を今さら。お世話になっているのは俺の方だ。
「…うん、知ってる。でも最後のキスは余計だったかな?酒臭いし…」
「あはは、リンちゃんからのサービスよ!」
豪快に笑う彼を引きずるようにして、横断歩道を渡ろうとしたその時。
「…あら、あの子かなり美人ね」
目線を辿って、
凍りついた。
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