23 / 330

23.

嫌な予感というものは大抵当たってしまうもので。 送信失敗の画面が見えて、滅多にしない舌打ちをひとつ。 あの日から彼―――芹生くんと、連絡が取れていない。 原因は間違いなく俺。だけど、ちゃんと誤解を解いておきたかった。 (…ハンカチも返せてないし) なんて、完璧な口実だ。 コンビニに行っても、俺にとっては意味を為さない姿が並ぶばかり。 無性に煙草が懐かしくなって、財布を片手に立ち上がる。もう何年もご無沙汰だが、あの銘柄はあるだろうか。 その時。 「………!」 プライベート用のスマホが震えた。しかし、画面に表示された名前を見てすぐに落胆する。 「…もしもし」 『よーっす。ルイ、元気か?』 再びソファに身体を沈めて天井を仰ぐ。 「元気なわけないでしょ…」 『だよなぁ。店休んでるって聞いたから、体調でも崩したのかと思って』 「体調、っていうか…精神的にキてる」 『へえ、お前が?』 「…俺はハルと違って繊細だから」 ああ、煙草が吸いたい。 『うわ、自分で言うなよ…。どうせ暇だろ?そっち行ってやるから、飲もうぜ』 「えー…」 渋る俺の耳に、ひそりと忍び込んだ言葉。 『…芹生くん』 「は…、?」 思わず身体を起こす。 『よし、お前の家で決まりな。何か買ってくモンある?』 「…ない。から、取りあえず早く来て」 『はーいよ』 切ってから、煙草を頼めば良かったと後悔した。

ともだちにシェアしよう!