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「…で、何で芹生くんのこと?」 「知ってるもなにも、あの子が働き始めた頃から口説いてるからなぁ」 「お引き取りください」 ドアを指すと慌てて手を振る姿は笑えない、全く。 「冗談だって、知ってるのは本当だけど口説いたりしてねえよ!まあ、それに近いことは…うん……」 後半は黙殺して、缶ビールに口をつける。 「そもそもな、芹生くんと細田は短期のバイトなんだとさ」 「細田…ってあのいつも横にいる?」 頷いてビールを煽る彼は、こう続けた。 「新学期が始まるまでの…要は2月と3月だけ、夜勤で入ってたらしい」 なるほど、それでもう居ないわけだ。しかしメールの受信拒否をされている以上、こちらからの連絡手段はない。 (電話もLINEもしてないし…) ミウを構おうと指を鳴らすハルに向き直る。 「…頼みがあるんだけど―――」

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