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「…ちょっとごめん、会いに来た人が居るんだ」 左右に分かれた女生徒の間を抜けてこちらへ向かってくるのは。 (ルイさん、) 気付かれる前に逃げてしまえば良かったのに、と思っても後の祭りだ。 「久しぶり、芹生くん」 目を細めて笑う彼は、相変わらずで。 俺は黙って頭を下げた。 ここでは目立つから、と実験棟の裏にある駐車場へ。昼間はほとんど誰も使わないため、今もひっそりしている。 「…良く、分かりましたね」 まず口をついて出たのは何とも可愛げのない言葉。 「ハルに頼み込んで調べてもらったんだ。君の友達…えーと、細田くん?と連絡先交換してたらしくて」 穏やかに告げる彼の顔を見られない。そよ、と吹いた風が女物の香水の匂いを運んでくる。 「何しに来たんです?」 「うん、誤解を解きたくてね。連絡も取れなかったし」 やけに甘ったるいその残り香が、癇に障った。 抑えなければ、と思うのに気が立って行く一方で。 「…誤解?別に俺とあなたの間には何も無いのに」 「芹生くん、」 隣でこちらを向く気配がする。 「だいたい、連絡しようがしまいが俺の勝手でしょう?」 ああ。これ以上は、本当に――― 「それをわざわざ学校まで来るなんて…」 匂いが、ふわりと一層強く香った。 「やめてくださいよ。ストーカーじゃあるまいし」 ―――違う、こんなことを言いたかったんじゃない そして訪れた静寂。 「………そう、分かった」 視界に影が落ちる。ぽん、と頭に手を置かれても、顔は上げられそうになくて。 砂利を踏む足音が遠ざかって行く。 ただ、じっと聞いていた。

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