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あれからどうやって帰ったのか、まるで覚えていない。 気付けば家の天井を眺めていた。 のろのろと腕を伸ばして、放り投げたスマホを引き寄せる。 「あ…もしもし、直人さん」 俺の酷い声色から何かを感じ取ったのか、休暇延長の申請を受けてくれたオーナー。 こんな状態で仕事ができるわけもなく。 ただ、彼の言葉を反芻しながら目を瞑る。 どうしてここまで衝撃を受けるのか。 今までチヤホヤされてきたのに? プライドを傷付けられたせい? たぶん、どれも違う。 彼だから。芹生くん、だから。 腕で目元を覆った。

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