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28.
知らぬ間に寝ていたようで、ふと目を覚ました。
ドアの向こうでミウの鳴き声がする。
窓から差すのは温かいオレンジ色。思ったより時間が経っていたようだ。
餌をやってからスマホを手に取る。
スライドで画面ロックを解除した瞬間、またもや彼から電話が。
少し迷って、通話をタップした。
「はい…」
『…上手く行かなかったのか?』
珍しく気遣わしげな声の相手に、悪いことをしたと思う。
「ごめん。色々してくれたのに…」
『悪いと思ってんなら早くドア開けろよ、ばーか』
ドア…?
―――まさか。
慌ててスコープを覗くと、向かいの廊下にもたれ掛かる姿が。
「…お疲れ様、話聞いてやるから」
路 に迷った子供を見るようなその視線に、目頭が熱くなる。
鍵を外した俺は、きっと酷い顔をしていただろう。
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