28 / 330

28.

知らぬ間に寝ていたようで、ふと目を覚ました。 ドアの向こうでミウの鳴き声がする。 窓から差すのは温かいオレンジ色。思ったより時間が経っていたようだ。 餌をやってからスマホを手に取る。 スライドで画面ロックを解除した瞬間、またもや彼から電話が。 少し迷って、通話をタップした。 「はい…」 『…上手く行かなかったのか?』 珍しく気遣わしげな声の相手に、悪いことをしたと思う。 「ごめん。色々してくれたのに…」 『悪いと思ってんなら早くドア開けろよ、ばーか』 ドア…? ―――まさか。 慌ててスコープを覗くと、向かいの廊下にもたれ掛かる姿が。 「…お疲れ様、話聞いてやるから」 (みち)に迷った子供を見るようなその視線に、目頭が熱くなる。 鍵を外した俺は、きっと酷い顔をしていただろう。

ともだちにシェアしよう!