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31.
紙をしまってのろのろと歩き出す。
青空に桜が散る様子は例えようもなく綺麗で、思わず足を止めた。
ベンチに座り、取り出すのはスマホ。
検索窓に店の名前を入れ、ホームページへと飛ぶ。以前も見たキャスト一覧。
(あ…休暇中、って……)
ルイ、という名前の横には休暇中の文字が。どうやら本当だったようだ。
画面を消して、空を仰ぐ。
心にもないことを言って、ひどく傷付けた。幾多の荒波を乗り越えて来たであろう人だから、それほど気にしていないと思い込んで。
あの時―――ありがとうと伝えたかったのに。
手にした白い紙を見つめる。
俺に、まだ贖罪の機会はあるだろうか。罵られても仕方がない、当たり前だ。
(でも……)
初めて俺に可愛いと言わなかった男の人。
不思議な雰囲気なのに、どこかあどけなくて。それでいてやっぱり、綺麗。本当は、もっと仲良くなりたかった。
―――このまま終わりにはしたくない。
ちゃんと、会って。顔を見て謝ろう。
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