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32.
「すみません、突然…」
「気にすんなって、俺がお節介してるだけだから」
隣を歩くハルさんを見ながら謝る。
あれから、結局彼に電話をして。約束を取り付けてもらい、俺達はルイさんのマンションへと向かっていた。
「…ちゃんと仲直りできるといいな」
くしゃりと頭を撫でられ、緊張が少し解れる気がした。
「アイツが腑抜けだと張り合いねーんだよなぁ」
おどけた調子のその言葉は、俺を気遣ってくれたのだろうか。
どういう結果になったとしても、胸を張ってこの人と細田に報告できるように、精一杯頑張ろう。
後ろで待ってて、と言われて大人しく下がる。
チャイムの音が聞こえて、足が竦む。
ああ、今すぐにでも逃げ出したい…
「はよ、約束通り来てやったぜ!」
「約束通りっていうかだいぶ早いんだけど…まあいいや、上がって」
ふわ、と欠伸混じりの声が聞こえて、思わず身体が強ばる。
(や、やっぱり…無理、かも………)
姿を見る前からこんな風に固まっていては、きっとまともに話なんて出来ない。そろりとハルさんの背中に手を伸ばす。
「……て、事だからさ。俺忙しいし、あとはお2人さんでよろしく~」
「は…?」
「ちょ、ハルさん!?」
くるりと振り向いた彼に手首を掴まれ。気付けば前に押し出されていた。
「っ、え…な、なんで…君、が…ここに?」
……………おい待て。
錆びたロボットのように後ろへ首を回せば、彼は飄々とした顔でこう宣った。
「あっれー?言ってなかったっけか?今日お邪魔するのは俺じゃなくて芹生くんな、どうぞごゆっくり~」
唖然とする俺達は完全に置いてきぼりだ。
それじゃあ予定があるから、なんて。
そんな、話と違う…!
立ち去る背中をぽかんと見つめることしかできない。
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