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33.
「え、と………」
―――せりょう、くん
その声に呼ばれるのは随分と久しぶりな気がして、はっと我に返った。
「す、みません…!あの、俺もこれで失礼し―――っ!?」
慌てて引き返そうと背を向けるも、肘のあたりを掴まれて。
「…ごめん。でも、話したいことがあるんだ。上がってもらえないかな」
恐る恐る目にした彼の視線は、あちこち迷っていた。
門前払い、されない。ということは。
(謝るチャンスも、あるってこと…か?)
ゆっくり向き直って、頷く。心無しか硬い面持ちのまま、彼は扉を開いてくれた。
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