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しばらくして、ため息をついたルイさんは後ろにもたれ掛かる。
「…そんなことか、って言ってあげたいけど。俺も案外ガキだったみたい」
あれは流石に落ち込んだよ、と続けて見せた表情はどことなく悲しそうで。考えがまとまる前に言い募った。
「本当に、あんなこと思ってたわけじゃなくて…その、言葉の弾みっていうか、ええと……」
上手く伝えられずに唇を噛んだ。目の前の彼は黙って俺を見ている。
「…バイトの期間が終わって、店からいなくなったのに、俺を覚えててくれたのが嬉しくて。だから、ありがとうって…言いたかったのに、」
言葉にすると自分がどれだけこの人を傷付けてしまったか良く分かる。悲しくて、情けなくて。じわりと涙が滲んだ。
「誤解を解きに来たって言ってましたけど、別に良いんです…あれが誤解なんかじゃなくて、事実でも。…すごく綺麗な人だったし、お似合いだと思います。」
見て、思ったままを述べると彼の眉が潜められた。
本命のことだから、俺なんかが言及するべきじゃなかったんだろうか。
深呼吸をしたのに、ひくりと喉が痙攣する。
「だから、気にかけてもらえて…っ、もう、その気持ちだけで、…俺は、じゅうぶん、で―――」
「…芹生くん、」
そっと目元を拭われて、口を噤んだ。手を伸ばす彼は僅かに微笑んでいて。
「そっち、行っていい…?」
成人した大人なのに、泣いている所を見られた、とかきっとひどい酷い顔なんだろう、とか。ただ恥ずかしくて。
やっとの思いで頷くと、端に寄った。
俯く俺の頭を撫でながら、彼の口から出た言葉は。
「まず、あの人は美容室に勤務してて、仕事でお世話になってる。…でも、彼にはちゃんと素敵なパートナーが居るよ」
彼―――?
聞き間違いだろうか。どう考えても女性にしか見えなかったのに…?
………まさか。
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