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39.
すっかり冷めてしまった飲み物を淹れ直して、また正面に座る。
匂いにつられたのか近寄ってきたミウを抱き上げ、向かい側を見ると。
触りたい、とはっきり顔にそう書いてあった。
「…芹生くん、おいで」
猫を膝に乗せたまま手招きする。隣を叩いて座るように促すと、彼はしばらく迷った末にゆっくりこちらへ移動してきた。
「なんで分かったんですか?」
「んー?…ナイショ」
不思議そうに首を傾げる彼を撫でてやりたくなったが、我慢だ。
ミウと戯れる姿を確認して、あの袋を取りに向かった。俺が臆病だったせいで、今まで返せなかったもの。
「これ…ずっと持ってて、ごめん」
開けて、と視線で促す。かさりと音を立てながら袋を覗いた彼は、やっぱり目を見開いて。
「あの時の………」
そう、青いハンカチ。
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