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手料理、と言われても…。弁当は貯金のために家の材料で作っているだけで。それに、あくまで食べるのは自分だから、そこまで気兼ねすることもなく。
(人に食べさせる、ってなると……)
メールで日にちを決めた時に、リクエストも聞いた。
…の、だが。
『俺に食べてほしい料理、かな』
それじゃあ答えになってませんよ…!とスマホを握りしめたのは記憶に新しい。
悩むうちにも時間は流れ。当日を迎えてしまった。
(取りあえず、買い出しに行こう…)
食材を見れば、何か閃くかもしれない。一縷の望みを抱いて正門へ向かう。
(……あれ、デジャヴ…?)
何やら人だかりが出来ていて。その大半が女子。飛び交う黄色い声。
―――これは、まさか。
「お疲れ様、芹生くん」
きらきら輝く日の光を受けて、眩しそうに微笑むルイさんが立っていた。
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