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「はあ………ええと、この中で苦手な食材ありますか?」
カゴを覗き込むルイさんは、しばらくして首を横に振った。
「ううん、平気そう。だけど何を作るのかさっぱり分からない…」
「多分、量より質を取った方が良いと思って…フレンチのコース風にしようと考えてます。」
安い野菜や魚を見て頭の中で献立を組んで行く。
「へえ…すごいね。あまり沢山は食べられないから、その方がありがたいな」
本当は他にも理由があるんだけど、それは内緒にしておこう。
「あ、ビターチョコレート………」
目が止まった先にはカカオ70%のチョコレート。ちょっと眉をしかめた彼が好きなのは、もっと甘いタイプのものだということは知っている。
「大丈夫ですよ、粉砂糖と混ぜると甘くなりますから。いつもチョコ、買ってましたよね?」
コンビニで、と続けるとその双眸が見開かれた。
あの場所で出会ったことが、随分と昔のように感じられて。何だか不思議な気分だ。
「塩こしょうとか醤油は借りても良いですか?」
チョコレートを見つめたまま固まってしまった彼に、再度声を掛ける。
「あの…ルイさん?」
「…え、と…うん、家にあるはず…」
心ここにあらず、といった様子を不思議に思いながらもレジへ足を運んだ。
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