48 / 330

48.

「荷物、持たせちゃってすみません…」 「大丈夫。すぐそこだから、気にしないで」 スーパーを出た後。食材を詰めた袋をすっと奪われて。あまりに自然な動作だったから、気付くのが遅くなってしまった。 持ちますと言おうにも、彼は既に歩き始めてしまっている。慌てて追いかけながら、きっとこういう部分が女性には堪らないんだろうなあ、と。ひとり考えを巡らせていた。 そして今に至る。 ついこの間も訪れたマンション。まさかまた来ることになるとは思わなかった。 (あ、表札………) 前回はハルさんの背に隠れて、というよりそんな余裕がなかったから。思わずまじまじと見てしまう。 これは、やっぱり本当の苗字だろうか。 「どうぞ」 「お、お邪魔します…」 ガチャリとドアの開く音がして、慌てて足を進める。 「…にゃおん」 「ただいま」 袋を机に置いて猫を撫でたルイさんは、キッチンの案内をしてくれた。 「―――大体こんな感じだから、調味料の場所に迷ったらまた聞いて」 「はい、じゃあ…お借りしますね」 手を洗って、家から持参したエプロンを身に付ける。腕まくりをして、買い物袋に手を掛けた所で、ふと感じる視線。

ともだちにシェアしよう!