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48.
「荷物、持たせちゃってすみません…」
「大丈夫。すぐそこだから、気にしないで」
スーパーを出た後。食材を詰めた袋をすっと奪われて。あまりに自然な動作だったから、気付くのが遅くなってしまった。
持ちますと言おうにも、彼は既に歩き始めてしまっている。慌てて追いかけながら、きっとこういう部分が女性には堪らないんだろうなあ、と。ひとり考えを巡らせていた。
そして今に至る。
ついこの間も訪れたマンション。まさかまた来ることになるとは思わなかった。
(あ、表札………)
前回はハルさんの背に隠れて、というよりそんな余裕がなかったから。思わずまじまじと見てしまう。
これは、やっぱり本当の苗字だろうか。
「どうぞ」
「お、お邪魔します…」
ガチャリとドアの開く音がして、慌てて足を進める。
「…にゃおん」
「ただいま」
袋を机に置いて猫を撫でたルイさんは、キッチンの案内をしてくれた。
「―――大体こんな感じだから、調味料の場所に迷ったらまた聞いて」
「はい、じゃあ…お借りしますね」
手を洗って、家から持参したエプロンを身に付ける。腕まくりをして、買い物袋に手を掛けた所で、ふと感じる視線。
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