49 / 330
49.
芹生くんの手が止まる。
「……えっと…?」
どうやら凝視しすぎたようで、ばっちり目が合ってしまった。
「エプロン………」
何とかそれだけ声にすると、彼は頷いて自身を見下ろす。
「いつも家で着てるから、持ってきたんですけど…変でした?」
くるりと回って首を傾げる仕草の破壊力といったら。
「いや………料理、頑張って」
ミウを抱き上げ、首筋に顔を埋める。キッチンに背を向ける形で座らないと、何をしでかすか分からない。
(可愛すぎるだろ…)
前は仲直りすることでいっぱいいっぱいだったから、気にしていなかったけれど。自分が普段生活している部屋に、今は、彼が居て。
(……………俺、大丈夫かな)
蜂蜜色の瞳を覗き込んで、ため息をついた。
ともだちにシェアしよう!