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運ばれてきたデザートを見て、驚いた。 「俺…フォンダンショコラが好きって、芹生くんに言ったっけ…?」 「え、そうなんですか?」 しばし見つめ合ったあと、どちらからともなく吹き出してしまう。 「はは…何ていうか、流石だね」 「俺もびっくりしましたよ…」 冷めないうちにどうぞ、と勧められて切れ込みを入れた。 とろりと溢れるチョコを見て、彼が安堵したのがこちらに伝わる。きっと、中心部分が固まりすぎないか心配していたのだろう。分かりやすくて本当に可愛い。 一旦キッチンに引っ込んだ姿が戻ってくるのを確認して、ひと切れ口に運んだ。 「………美味しい」 「本当ですか?デザートだけはこれを作ろうって決めてて、家で練習してたんですけど…上手く出来て良かった」 嬉しそうに笑う彼の可愛さといったら…頭を抱えたくなる。

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