56 / 330

56.

「…次は一緒に食べよう」 ややあって、ぽつりと漏らされたひとこと。 たった今、目の前でデザートを食べ終えたばかりなのに。何故そんなことを… 「え、あの…今、デザート…一緒に食べましたよね?」 頬杖を付いて俺を見るルイさんの目が、すうっと細められた。 「ううん。『料理も』だよ」 心のうちを見透かされた気がして、絶句。 ああ、なんでこの人は――― 「俺に黙ってた罰として、ね」 そのまま楽しそうに笑う彼には、きっと気付かれているのだろう。 傍に居るのが恥ずかしくて、コース料理にしたこと。料理が得意だと敢えて言わずに、驚かせたかったこと。 これは完全に胃袋掴まれたかなぁ、なんて呟くルイさんには敵いそうもない。 「また明日から仕事頑張れそうだよ」 頭を撫でる大きな手の感触に目を細めて、応援してますと告げた。

ともだちにシェアしよう!