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57.
「ほんっっっとうにごめんなさい!」
予想以上に深々と頭を下げる姿を見せられて、かえってこちらが戸惑ってしまう。
「いや、まあ…リンさんが悪いわけじゃないし………」
そう、タイミングの問題。全く腹が立たなかったかと言えば嘘になる。ただ、その怒りをぶつける相手が彼ではなかっただけの話だ。
「お酒は強い方だと思ってたんだけど、まさかあんな風になるなんて…」
「彼氏さんと色々あったんだから仕方ないよ」
ため息を背中で受けながらいつもの席に座った。
「でも全然連絡くれなかったでしょう?心配したんだから!」
「うーん…こっちも立て込んでてさ」
口を尖らせて背後に回った彼に、おあいこだと笑ってみせる。
「……で、仲直りはできたの?」
「嫁にほしい」
「飛躍しすぎ…」
アナタの思考回路はいつまで経っても読めないわ、と苦笑するリンさんに髪をセットしてもらって。
久しぶりの仕事だ。ブランクの分まで頑張ろう。
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