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61.
「……あ、れ」
いつもの駐車場に着くと、そこは無人で。
スマホを取り出して日付を確認する。メールを打とうとして、ふと手を止めた。
(…料理は作るって約束だけど、買い出しは毎回付き合ってくれるわけじゃないのかな)
もし、今までが彼の気まぐれだとしたら。今日はたまたま忙しいのかもしれない。
確かめるのが怖くて、結局メールは送らずに削除。
(マンションまで行って、留守なら帰ろう…)
いつものスーパーへ足を向けた。
買い物を終えて見慣れた扉の前に立つ。呼び鈴を鳴らすが応答なし。
明らかに落胆している自分に苦笑を向けて、スマホを取り出した。帰る旨を伝えようと画面をタップしたところで、微かに聞こえる音。
(部屋には居る、のか…?)
思わず興味を惹かれてドアに耳をつけると。
(……ああ、猫の声だ)
何度か訪れるようになってから、ようやく懐いてくれたアメリカンショートヘアのミウちゃんを思い出して頬を緩めた。
しかし、何か引っかかる。
普段はたまにしか鳴かない、いわゆる大人しい部類に入るはずなのに。今日は何故かひっきりなしに鳴いていて。
そう―――人間で言うと、切羽詰まったような声。
訳のわからない焦燥感に襲われて、それでも一応遠慮がちにドアノブを回す。
(え……開い、てる…!?)
あたりを見回してから、そっと体を滑り込ませた。
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