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62.
チャイムが鳴ったような、気もする。
被せるようにミウが声をあげていて。でも、呼ぼうとした名前は喉に張り付いたまま。
体調の悪さを自覚した途端、急に寒気が襲ってきて、自由の利かない体を抱え込むように小さく丸めた。
「―――ルイ、さん…?」
幻聴か…
いや、違う。今日は芹生くんが料理を作りに来る日だ。
「玄関、開いてて……っていうかどうし―――」
ぐったり横たわる俺の姿を見たのか、息を呑む音が聞こえた。瞼は鉛のように重くて上げられないけれど。
ふと、額にひんやりとした感触。そのまま頬に下りてくるこれは、手のひらだろうか。冷たいそれにすり寄ったのは、きっと無意識だ。
離れる温度と、遠ざかる足音。ミウも静かになって、無性に寂しさを感じる。
―――遠くで、扉の閉まる音が聞こえた。
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