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66.
帰る、イコール拒絶という訳ではないし、彼もそういうつもりで言ってはいないだろう。
ただ、思い出してしまった。リンさんを連れて、交差点ですれ違ったあの時を。
何に対してかは分からないが、終わってしまったと感じた。
俺の全てを拒絶するような、冷たい瞳。
「―――頼むから、拒まないで」
ぽろりと落ちた言葉に、驚いているのは自分自身。『芹生』という人間がそれだけ心を占めている事実を、まざまざと突きつけられた気がした。
彼は優しいから。
弱さを理由に、今日だけは許して貰えるだろうか。
「…じゃあ、一緒に食べましょう?」
顔を伏せたままの俺に、何を問うでもなく。
決して押し付けがましくない、穏やかな声音でそう告げられ、頭に手のひらが乗る。
多めに作っておいて良かったと笑うこの子は、とても聡い。
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