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67.
何を、なんて聞けなかった。それをするには、あまりにも心当たりがありすぎて。
(……拒まないで、か)
思い出されるのは、あの日の駐車場。酷いことを言ってしまったと、今でも後悔している。
だから、敢えて何も言わなかった。いや…言えなかった。
食べ終わった食器を片付け、寝室に戻るよう促し、自らも後を追って先ほどの位置に座る。
勤務先に連絡を入れ、薬を飲んだ彼が眠る体勢に入る前、ずっと聞きたかったことを口にした。
「あの…ルイさん」
視線で応えてくれた彼を見て、ごくりと唾を飲み込む。
「……表札って、本当の苗字…ですか?」
俺は彼の本名すら知らない。それが少し悲しくて、今なら答えてくれるかもしれないと淡い期待を込めた。
一瞬の後 、ふっと吹き出した目の間のひと。まさかそんな反応をされるとは予想もしていなくて、きょとんとしてしまう。
「…うん、そうだよ。改まって聞くから何かと思って身構えたんだけど…ふふ、やっぱり君は面白いね」
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