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開店前のホストクラブに入らせてもらうなんて、一生にそう何度もないだろう。 きょろきょろと周りを見回す俺の手を引いて、部屋の端に置かれた椅子へ向かうルイさん。どことなく表情が硬い気もするけれど…。 「取りあえず、ここで見ててくれるかな?何かあれば俺のこと捕まえて」 ……捕まえて、と言われても。 「ルイさん忙しいだろうし、それは申し訳ないですよ…」 きっと困った顔になってしまっている。見られたくなくて俯くと、ぽんと頭を撫でられた。 「…そう言うと思って、頼んであるから」 意味が分からずに、見上げると。ルイさんに手招かれた男性が近寄ってくる。 「あ、この子ですか?」 「うん、そう。よろしくね」 へらりと笑ったその男性は、俺と同じ高さまで目線を合わせてくれた。 「初めまして!俺、(しょう)って言います。今日は君のお世話、ルイさんに頼まれてるんだ。ちょっとの間だけど、よろしくな~」 人懐っこい笑顔に、緊張も解れる。軽く頭を下げて挨拶をした。

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