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79.
曲がり角の先で、不意に立ち止まった翔さん。ぶつかりそうになって、慌てて足を止めた。
「…芹生くん」
「え、はい…」
くるりと振り返った彼に、ガシッと両手を握られる。びっくりして反射的に身を引くも、更に顔を近づけてひとこと。
「連絡先、教えて!」
ぽかんと口を開けてしまった。なぜ、急に…?
「あの、別に構わないですけど…何で…」
「話しててすげえ楽しいし、もし嫌じゃなかったらこれからも仲良くしてほしいなって」
その目つきは真剣そのもので。
気圧されながらも、こくりと頷く。
「…俺ので、良ければ」
「マジで!?よっしゃあ!」
掴まれたままの手を上下に振られて、思わず笑ってしまった。
じゃあ俺は先に戻ってるから、と言い置いて元きた道を戻る翔さん。少し浮き足立っているように見えて、俺の連絡先くらいでそこまで喜んでもらえるのか、と何だか嬉しく思った。
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