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開店してしばらく経った今も、何となく集中できなくて。理由は分かりきっているのに、割り切れない自分に苦笑い。 頭を振って、隣のミカちゃんに向き直ったところで、向こうから近づいてくる翔が目に入った。 「…すいません、ルイさん。ちょっと良いですか」 一応声量を落としてはいるが、騒がしい店内では小声で話すわけにもいかず。 聞き耳を立てるミカちゃんの存在を感じながら、視線で応える。 「芹生くんなんですけど、何時くらいに帰しますか?俺もそれに合わせて後の予定決めようと思って…」 時間についてオーナーには話を通していたものの、翔には伝えていなかったと気付いた。 何度かやり取りをして、接客に戻ると。 「…ねえ、あの子。セリョウ?っていうんだ」 予想していたとはいえ、実際に聞かれると良い気はしない。彼のことをあまり話したくもなかった。 適当にあしらうと、あっさり引き下がる彼女。どこか不審感を抱きつつ、業務に支障が出なければ良いかと思い直す。 去った翔が、柱の陰でほくそ笑んでいるとも知らずに。

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